「犬の腎不全」
腎臓は血液中の老廃物を尿として排泄する機能を担っていて、生体にとってとても大切な臓器の一つです。腎臓が働かなくなってしまう腎不全には「急性」と「慢性」があります。
急 性腎不全は急激な腎機能の低下により、早急に治療をしないと死に至ることもあるような、いわゆる緊急な状態ですが、適切な治療を行うことにより腎機能が回 復する可能性もあります。急激な腎機能の低下を起こさせる原因としては、腎臓に十分な血液が届かない(出血、脱水、循環器系の異常など)、腎臓そのものが 障害をうけている(腎炎、感染、毒性物質など)、尿が排泄できない状態(結石や腫瘍などによる尿道閉塞、事故による膀胱破裂など)、などが挙げられます。
一方、慢性腎不全は腎臓が数カ月から数年かけて徐々に機能低下を起こしていく病変であり、初期の頃はほとんど症状を示さないことが多いのですが、悪くなってしまった腎臓は残念ながら元に戻ることはありませんので、この病気になったら進行を遅らせるための治療を選択することになります。
症状
急性腎不全
突然ぐったりする、嘔吐、意識の低下、呼吸が荒い、排尿がない など
慢性腎不全
体重減少、食欲低下、活動的ではなくなる、嘔吐が多くなる、口臭がする、便秘、被毛につやがなくなる など
診療
尿検査や血液検査を行い、腎臓の働きを確認します。超音波やレントゲンなどの画像診断を行うこともあります。また、高血圧を調べるために血圧測定を行います。
急性腎不全の場合では、入院治療が一般的です。積極的な輸液療法がおこなわれます。
慢性腎不全の場合では、程度にもよりますが、腎臓に負担をかけないようにするための降圧剤や処方食が処方されます。脱水が見られる際は皮下補液なども行います。先述したとおり、この病気を治すことはできないため、処方された薬や食事は基本的に生涯続けることになります。
予防
上 記のような症状がみられたら早めに受診することが大切です。また、急性腎不全は、膀胱炎や膀胱結石などから尿道閉塞を起こし排尿できないことから引き起こ されることが多いため、日頃から排尿時の様子や尿の色・量を知っておき、おかしいと思うことがあればすぐに受診しましょう。また、人の風邪薬や植物のユリ などが原因で急性腎不全を起こすこともありますので、十分に注意しましょう。
慢性腎不全の発症年齢の平均は、犬で7歳です。どの年齢でも発症するものの、加齢とともに増加傾向にありますので、シニア期からは特に定期的な健康診断を心がけ(年に一度の検査を年に二度にするなど)、早期発見に努めましょう。