よくある相談【猫の下痢 後編 】獣医師が対処法、受診の判断、検査・治療について徹底解説
この記事を監修した獣医師
anicli24 院長
三宅 亜希みやけ あき
犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。
犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。
猫ちゃんの下痢 自宅でできる対処法は?
便の状態をチェック
便の形、匂い、色、便以外のもの混ざっていないか、排便回数、などを確かめます。
【便の形】
ひとことで下痢と言っても、その形状はさまざまです。いつもより少し軟らかい程度なのか、形がある軟便(有形軟便)なのか形がないのか、泥状なのか水状(水様性)なのかなどを確かめます。もちろん、水っぽくなるほど状態としてはよくありません。
【匂い】
便は臭いものですが、腸に炎症があると通常の便の匂いとは異なることがあります。酸っぱい匂いがする、腐敗臭(食べ物が腐ったようなにおい)がする、という場合は、腸炎を起こしているかもしれません。
【色】
便の色は食べ物によって変わりますが、血液が混じる、正常に消化できていない、という場合も通常の色と異なります。血液は出口付近(大腸~肛門)での出血の場合は新鮮な血液のため、鮮やかな赤やピンク色が便に付着します。このような出血は食べすぎなどの下痢でも起こりえます。一方で、胃~小腸で出血がある場合は排便される間に血液が酸化し、どす黒いタールのような便が出ます。胃や小腸での出血は病気の可能性が高いため楽観視できません。また、白~黄色の便をする場合は膵外分泌不全により消化酵素が働いていない可能性が高いです。
【便以外のものが混ざっていないか】
下痢の際には、血液が混じったり、腸から分泌される粘液が増えてゼリー状のものが混じったりすることがあります。また、異物誤飲などが原因で下痢をしている場合は、便に異物が混じって排泄されていることがあります。毛づくろいで飲み込んだ毛が毛玉として吐き出されずに便から出てくることもあります。
【排便回数】
便の回数がいつもに比べて極端に増えていないかを確認します。水のような下痢を回数多くしているときは脱水が心配です。また、ちょこちょこと数的ずつ絞り出すように何度も排便したり、排便しようとしても出なかったりすることを「しぶり便」といいますが、しぶり便がみられるときは大腸炎を起こしている可能性が高いです。
尿をチェック
下痢をしていると脱水を起こさないかと心配になりますが、そんなときは尿もチェックしてみます。尿の回数が少ない、1回量が少ない、尿の色がいつもよりも濃い、という場合は身体の水分が足りない状態かもしれません。
食欲をチェック
下痢をしているときに食欲も落ちていたり、吐き気があったりする場合は注意が必要です。逆に、下痢をしていても食欲旺盛の場合は健康上はやや安心できますが、たくさん食べさせてしまうと再度下痢を引き起こすおそれがあるため、便の状態が落ち着くまでは食事量を減らすなど調整したほうがいいでしょう。(子猫や糖尿病でインスリン投与している猫では食事量を減らしたり絶食させたりすると低血糖症を起こすおそれがあるため安易におこなわないようにします)
元気や落ち着きをチェック
いつも通りの元気があったり、もしくはリラックスして休んでいたりする場合はさほど辛い状態ではないことが多いです。落ち着かなくウロウロしたり、隅に隠れたりしているときは腹部に痛みがあったり、残便感があったりする可能性があります。
猫ちゃんの下痢 動物病院に行くべき?
人が日常生活を送る上でお腹をこわすことがあるのとおなじように、猫も一過性で軽度の下痢の場合、食事の変更や食べすぎ、おやつが合わなかったなど、深刻な病気ではないケースがほとんどです。下痢の状態もひどくなく、回数も正常で、食欲元気もあり、他に気になる症状がないようでしたら少し自宅で様子をみてもいいと思います。ですが、少しでも心配になる様子や気になる様子がみられる場合は万が一のことを考えて受診したほうが安心です。
受診判断のポイント
- 元気食欲がない
- 嘔吐など他の症状もおきている
- 下痢の回数が異常に多い(しぶり便がみられる)
- タール状のどす黒い便が出ている
- 尿の量が少なく色が濃い
- 食事の変更や与えすぎなど思い当たることがない
判断に迷ったら獣医師へ相談を
- 血便が見られるが少量
- 下痢の状態はひどそうだが元気
- 昨日まで下痢だったが今日は少しよくなっている
- 食事を抜いて様子をみたいが完全に絶食させて大丈夫か
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猫ちゃんの下痢 動物病院での検査・治療・費用は?
病院での検査は疑われる下痢の原因によって異なりますが、問診・触診・聴診・便検査はどのような場合でも行われることがほとんどです。そのため、猫の下痢で、受診する場合はなるべく便を持参しましょう。
検査
下痢を起こす病気は非常にたくさんあるため、場合によっては多くの検査が必要になることもありますが、一般的には以下の検査を行います。
問診で飼い主さんから普段の様子、症状が始まったタイミング、飲んでいる薬、予防歴、食事、などについて詳しく話を聞き、触診や聴診で腸の状態や腸の運動を確認します。
便検査で寄生虫や寄生虫の卵の有無、細菌の状態を確認します。
画像診断では、消化器(胃や腸)の炎症状況を確認したり、異物誤飲、腫瘍などがないかを確認したりします。
血液検査では、一般的な健康状態を確認し、血液中の電解質のバランスや、脱水の有無、炎症反応などを確認します。
治療
下痢の治療は、下痢の原因によって大きく異なります。病気の可能性が低く一過性の下痢であると判断された際は、通常下痢止めや整腸剤が処方されます。
費用
費用は検査内容、治療内容によって大きく異なるほか、動物病院は自由診療のため各病院によっても異なります。
日本獣医師会が全国の病院向けに行った診療料金についてのアンケートによる診療料金の中央値(データの真ん中の数値。平均値に比べて極端に大きい(小さい)数値の影響を受けにくい数値)を、以下に記載するので参考にしてください。
- 初診料:1,386円
- 再診料:726円
- 血液検査:7,216円(採血料、CBC検査料、生化学検査料の中央値の合計)
- 便検査:1,634円(直接法、集卵法の中央値の合計)
- レントゲン検査:3,931円
- 腹部超音波検査:3,204円
血液検査で検査する項目の種類、レントゲンの枚数、超音波で確認する場所の範囲などにより料金は変わってきます。
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