よくある相談【猫の嘔吐 前編】獣医師が代表的な5つの原因について徹底解説

この記事を監修した獣医師

anicli24 院長

三宅 亜希みやけ あき

犬・ネコの病気、予防医療、しつけ、ペットに関する気になることを専門の獣医師に電話相談できる電話動物病院「アニクリ24」の院長。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。

よくある相談内容

実際に来院される理由としてよくある症状を紹介していきたいと思います。ご自宅の猫ちゃんに同症状がみられた時に、参考にしてみて下さい。

多頭飼育。食後すぐに嘔吐

今年で5歳になるメス猫(避妊済み)を飼育しています。最近子猫を迎えいれたのですが、その子とは仲良く過ごしています。
ですが、食後に餌をそのまま嘔吐することが増えたように思います。

今までは毛玉くらいしか吐かなかったので心配です。吐いたあとはすぐに自分が吐いたフードを食べてしまいます。

獣医師からの回答

吐いたものを食べ、その後は吐かないということであれば、あまり深刻ではなさそうです。子猫を迎え入れたとのことなので、ゆっくり食事を食べられずに急いで食べたり、食べてすぐ走り回ったり、などの様子はないでしょうか。もし思い当たるようでしたら、それらが嘔吐の原因になっているかもしれません。

なるべくゆっくり食事ができるように、子猫が登ってこられないキャットタワーの上の方などに食事を用意してあげるといいかもしれません。もし、そのような工夫をしても嘔吐に改善がみられないときは、別の原因を考える必要があるため、受診を検討されることをおすすめします。

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猫ちゃんが嘔吐を起こす原因

猫が嘔吐を起こす原因は多岐にわたりますが、一過性で軽度の嘔吐の場合、食事の変更や食べすぎ、おやつが合わなかった、お腹が空きすぎて胃酸過多になったなど、深刻な病気ではないケースがほとんどです。一方で、病気による嘔吐も起こりえますので、猫の嘔吐の原因として押さえておきたい5つの原因を紹介したいと思います。ご自宅の猫に同症状がみられた時に、参考にしてみて下さい。

1. 食事が原因となる場合
2. 病原体が原因となる胃腸の病気
3. 病原体以外が原因となる胃腸の病気
4. 胃腸以外の病気や事故が原因となる場合
5. ストレスなど一過性の場合

食事が原因となる場合

食べ慣れていないものを食べた/普段のフードを食べすぎた/空腹の時間が長かった

猫はグルメ、と言われることが多いように、フードに飽きてしまったり、ウェットばかり欲しがったりなど、食事に苦労している方は多いでしょう。好んで食べてくれるフードをみつけようと、フードを変更したときに嘔吐をした場合は、食べなれないものを食べたことによる消化不良が原因かもしれません。
また、普段から食べているフードやおやつも、食べすぎることや急いで食べたことで嘔吐を起こすことがあります。
さらに、朝ごはんの前に白~黄色の泡のような液体を吐いた、というようなケースでは、お腹がすいて胃酸がたくさん出たことによる嘔吐の可能性が考えられます。

上記の原因が疑われるときは、フードやおやつの量や種類、与える時間などをみなおします。食べすぎている場合では、必要に応じておなかを休めるために食事を1回分抜くなどの対策をおこないますが、生後数か月の子猫の場合は、食事を抜くと低血糖を起こす恐れがあるため容易におこなわないようにしましょう。

食物アレルギー

ある特定の食べ物がアレルゲンとなっていることがあります。猫の食物アレルギーの主症状は痒みや脱毛など皮膚におこりますが、まれに嘔吐の症状が出ることもあります。
アレルギーが疑われる場合は、アレルギー除去食を食べ症状がおさまるかどうかを確認します。症状がおさまったあとに普通食に戻し、再度同じ症状が出た場合、食物アレルギーであると診断されます。血液検査でアレルゲンを調べることもできます。
食物アレルギーと診断されたあとは、アレルギー除去食をずっと食べてもらうことになります。

病原体が原因となる胃腸の病気

細菌

クロストリジウム、カンピロバクター、サルモネラなどの細菌が原因となって嘔吐や下痢を引き起こします。サルモネラ菌は生肉を食べることなどで感染することが知られています。細菌性の腸炎は一般的に抗生剤や整腸剤で治療します。

ウイルス

猫パルボウイルスや猫コロナウイルスなどが原因となって嘔吐などの消化器症状を引き起こすことがあります。猫パルボウイルスは感染力が強いですがワクチンで予防ができます。また、猫コロナウイルスが変異したものが猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因になりますが、変異前の猫コロナウイルスは、無症状~軽度の下痢を起こすのみとなります。ウイルス性腸炎は一般的に輸液療法や細菌の二次感染を防ぐための抗生物質などで治療します。

寄生虫

猫回虫、犬小回虫、猫鉤虫、猫条虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスなどの寄生虫が原因となって消化器症状を起こします。主症状は下痢ですが、嘔吐を起こすこともあります。寄生虫感染は、感染した猫の便を口にする、感染した母親から母乳でうつる、感染したノミや小動物(ネズミ、カエルなど)を食べる、など、寄生虫の種類によって様々です。寄生虫性腸炎は一般的に寄生虫駆除剤によって治療します。

病原体以外が原因となる胃腸の病気

胃炎(急性胃炎)

胃炎の中でも原因不明で急激に嘔吐を起こすものの、数日で良化するものを急性胃炎といいます。急性胃炎は一般的に絶食、食事療法、制吐剤、胃腸運動改善薬などで治療します。

便秘

ひどい便秘になると食欲不振や嘔吐が起こります。便秘の原因には、構造上便が通過しづらい、構造上の問題はないが腸が正常に運動しない、毛玉などの異物による通過障害、排便を我慢するうちに習慣化する、などがあります。治療には緩下剤、浣腸、摘便などがあります。

炎症性腸炎(IBD)

はっきりした原因を特定できない慢性の腸炎です。人の炎症性腸炎(IBD)と同じように、免疫が関与していると考えられます。他の考えうる似た病気が全て否定されて初めて診断できる病気のため、診断をするのは難しいことがあります。炎症性腸炎は一般的に食事療法、抗生剤、抗炎症剤、免疫抑制剤などで治療します。

消化管腫瘍

腸にできる腫瘍としてはリンパ腫が一番多く、次に多いのは腺癌です。良性のものとしては、炎症性のポリープなどができる場合もあります。腫瘍により嘔吐を起こすことがあります。リンパ腫は一般的に化学療法が選択されます。腺癌を含むそれ以外の腫瘍では第一選択は外科切除です。

治療で使用している薬の特性により、嘔吐を起こすことがあります。薬を飲んだ刺激が嘔吐を引き起こしたり、薬により胃腸の運動が低下して嘔吐が起こったりします。薬による嘔吐がみられたときは休薬したり、必要に応じて吐き気止めや胃粘膜保護剤などが処方されたりします。

胃腸以外の病気や事故が原因となる場合

腎臓の病気

腎臓は体内に不必要な物質を尿として体外へ排泄させる機能を持っています。腎臓の機能が低下して、体内に不必要な物質が貯留すると、悪心が起こり、食欲不振や嘔吐がみられます。猫では慢性腎臓病が有名ですが、慢性腎臓病は残念ながら治せる病気ではないため、腎臓の負担を軽くする薬や、点滴、対症療法、療法食などで治療します。

肝臓の病気

肝臓は食べ物が代謝されたときに発生するアンモニアを無毒化する機能を持っています。肝臓の機能が低下して、血液中のアンモニアが増えると、悪心が起こり、食欲不振や嘔吐がみられます。猫では不適切な食事や突然の食欲不振による肝リピドーシス(脂肪肝)が有名です。肝リピドーシスは、点滴、栄養補給、食事療法などで治療します。

異物誤飲

おもちゃやひもを飲み込んだり、腐ったものを食べたり、自然毒や薬品などの誤飲により嘔吐を起こすことがあります。毛づくろいで飲みこんだ毛が原因になることもあります。飲み込んだものにより治療法は異なります。消化しない異物の場合は内視鏡や外科手術により取り除きます。

ストレスなど一過性の場合

猫は環境の変化によりストレスを強く受ける傾向があります。具体的には、旅行に連れて行った、ペットホテルに預けた、引っ越しをした、家族が増えた、他の動物が増えた、周囲で大きな工事の音がしている、などが挙げられます。思い当たるものがあり、それが取り除ける(猫から遠ざけられる)場合、はなるべくストレスの原因を取り除いてあげましょう。

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